なおぽん家

おまえはほぼ死んでいる。

シンの手料理

サウシン小説

これは一応完結してます。

サウシンの可能性を模索していたときの。

シンがユリアじゃなくサウザーに惚れてる設定のようです・・・

世紀末なのにカップラーメンとか出てくる(謎)。

 

シンの手料理

 

「おい居候!

料理を作れ。この聖帝に食べさせてみろ。」

あいかわず尊大に人にものを言う男だ。

「…なぜ、俺が貴様にそんなことをしなければならない?」

「貴様の料理が食べたいからだ。」

…。

態度は尊大だが、そんな事を言われればシンは断れない。

何故なら、

…シンはサウザーに惚れているからである。

 

事の始まりはつい数日前。

シンは自分の居城であるサザンクロスを抜け出し、聖帝十字領近辺を彷徨っていた。

理由は恋煩いで、半ばストーカーに近いものであるのだが。

未だ建設途中の十字領の袂でもの思いにふけっていた。

そのとき、工事の邪魔をするレジスタンス崩れの連中が現場を荒らしていたので、イラついていたシンがそれを一掃した。

しかし、数週間ほど飲まず食わずで彷徨っていたので、ケンシロウよろしく行き倒れになっていたところを、聖帝に発見されて今に至るという訳だ。

今頃サザンクロスの部下達は大騒ぎである。

 

サウザー様。あのシンという人物、如何致しましょう?

と、いうか何故ここに居座っているのでしょう…?」

さっさと帰って欲しい。という雰囲気であるが、本人はこれ幸いとなんだかんだと理由をつけて留まり続けている。

「知らん。

いい、放っておけ。」

「しかし…。」

サウザー様の業務にも差し支えがあるのでは…?

それにあの者の聖帝様を見る目がなんだか異常であることをこの部下は敏感に感じとっていた。

「まぁ何かに役立つこともあるかもしれぬし…」

サウザーも意外と暇だったのである。

そう言えば、シンは料理が得意だという話を聞いたことがあった。

南斗の道場だったかでまことしやかに流れていたが、本当であろうか。

 

サウザー様?

今日の夕食のメニューですが…」

「ん?いや、シンに作らせる。

だから今日はいらぬ。」

「え?」

そうと決まれば、サウザーはいそいそとシンの部屋に向かった。

 

さて。

料理を作れと言われても…。

シンは頭を悩ませた。

なぜ、自分は料理好きという事になっているのだろう。

昔南斗の道場で食堂のお手伝いして

お駄賃貰ってたけど。

おにぎりくらいしか作れんぞ。

しかしサウザーにおにぎりなんて持っていけるか!

うーむ……。

サウザーの好物ってなんだ?

 

まずはそこからリサーチを始めた。

サウザーの部下に奴の好物は何だと聞いてみる。

 

「はぁ…好物…?」

「うーん…

サウザー様はいつもシェフの作る料理を食べてますから…。

口に合わぬって蹴飛ばすこともありますけど。」

えぇぇーーー⁇⁇

シンはいきなりハードル上がった感じがして聞くんじゃなかったと思った。いや、そうなったときのダメージは知っていた分軽減されるか⁇

「そういえば…サウザー様は

料理をひっくり返した日は

夜中にこっそり部屋で何か食べてる気がします…。」

「何かってなんだ…?」

別に堂々と食べればいいではないか。何をこっそり食べる必要が…?

ますます気になるシン。

サウザーの謎を解明すべく、

部屋への侵入作戦を試みる。

 

コン、コン

「…どうした。」

「あ…、シンなんだが。」

「…?入れ」

「…邪魔する。」

「…。」

サウザーの執務室に入る。

入り口付近にいる側近がやたら尋問にしつこくてかわすのが大変だった。

というか…

 

入ったはいいが、この部屋

サウザーの玉座以外に何もないのだが。景色を一望出来るデカイガラス張りの窓があるだけだな。

困った。

「…で、何の用だ?」

「いや…」

用というほどでは。

シンは視線を泳がせて必死に話題を探す。

「最近の調子はどうだ⁉︎サウザー‼︎」

「…は?」

なんだ、貴様は。

不審な表情を浮かべるサウザー

「聖帝軍の偵察か?」

違うっ…!

「そうだ!

最近南斗の道場にはめっきり顔を出さないではないか。

食堂のおばちゃんも…寂しがっていたぞ‼︎」

「む…?食堂?」

南斗の師範代の仕事は定期的に回って来る。シンもそんなに頻繁に顔を出すわけではないが、やはり拳法使いとして自分の腕は磨いておかないとならないので、将となった今も時たま道場に出向いては顔を合わせる連中は多い。

シンは食堂のおばちゃんと仲が良かった。

そういえば、サウザーさんって最近見えないけど、忙しいのかしらねぇ〜?とか言っていたのだ。

 

そういえば、最近食堂のアレを食べていないな…。と

サウザーがひとりごちる。

「食堂のアレとはなんだ⁉︎」

シンが身を乗り出して聞き耳をたてる。

いつも食べるものがあるというのならばチャンスだ!

「ところで…って うわっっ。」

「貴様…!いつの間にこの聖帝の間合いに入った⁉︎」

シンの形相にビビるサウザー

しまった。興奮して近づきすぎてしまったか!

「この下郎を摘み出せ!」

「はっっ‼︎」

⁉︎

部屋から摘み出されてしまった…。

なんということだ。

トボトボと聖帝城を徘徊するシン。

すると、ちょうど城内のゴミを回収するモヒカンたちを発見する。

そのビニール袋の一つに、シンは目が止まった。半透明のビニールに透けているその中身は…!

「おい!この部屋はもしや…」

「は…?聖帝様の寝室ですが??」

やはり!シンは確信する。

そのビニール袋の中身は大量のカップ麺の空き容器‼︎

サウザーは夕食をすっぽかした日には空腹に耐え切れず、夜な夜なカップ麺をすすっていたに違いない‼︎

この食糧難の時代にインスタント食品など…!なんと贅沢なことか。

だから隠れていたのだな。

「あの〜〜…?」

もう行っていいっすか?とモヒカンはゴミを見つめるシンに困惑の眼差しを向けてそそくさと立ち去っていく。

…しかしだ。

いくらカップ麺が好きであろうと、これを料理として出すわけにはいかない。

…他に探れそうな手掛かりも全て失い、ふりだしにもどった…。

 

もうチャンスは巡って来ないのだろうか…。

落ち込むシンが

ふと顔を見上げると、正面には

サウザーのかつての師であるオウガイの肖像画が…。

これは…。

優しく微笑むオウガイの表情に、

ふとシンは脳裏に電流のようなものが駆け巡った。

サウザーよ。食事は栄養バランスを考えて、1日3食取りなさい。

食事は体の基本。

しっかり食べないと、強くて大きな体になれないぞ…。

…はい!お師さん。

しっかり食べて立派な拳法家に成ります!おかわり下さい!…

ははは…サウザーは頼もしいな…

将来が楽しみだ。

 

などという会話がシンの脳裏にひらめいた。

シンの妄想ではあるが、きっと昔はそんな様子だったに違いない。

オウガイはサウザーの師であり、育ての父であったと聞いている。

 

父が息子を思う気持ち。

我が子の成長を願い、作る料理とは…?

愛情の込められたそれが、サウザーの好物に違いない。

…これだ…!

シンは早速料理に取り掛かった。

 

サウザー、食事の準備出来たぞ。」

「ほう…して、貴様は何を作ったのだ?」

「それは見てのお楽しみだ。」

 

食卓につくサウザー

「こ…これは…」

たっぷり盛られたライス

食欲をそそる香り…

そう、カレーだ…

「…。」

「さぁ、食べてみてくれ。」

ろくに料理をしたことがなかったシンだが、厨房を借りたシェフの協力もあり、何とか完成させた。

シェフも、シンと一緒で

彼らの願いはただ一つ

サウザーに笑顔と昔のような温もりを…。

「…美味い。」

一瞬顔から険がとれて子供のように純粋な表情に戻った(ような気がした。)

「おぉぉ〜。」

周囲からどよめきが上がる。

「やりましたな、シンどの!」

「ふっ…。」

死線を共に越え、もはや戦友とも言えるシェフの労いの言葉に

止めていた息をゆるめてニヒルに笑ってみせた。

よかった…。

蹴っ飛ばされなかったことにひたすら安堵するシン。

もぐもぐと食べ続けるサウザーを見てると、この上なく達成感と幸せな気持ちに包まれた。

空になった皿にスプーンを置き、

ナプキンで口を拭くサウザー

さすが聖帝は上品だ。

「…味は悪くない。たいしたものだな、シン。」

サウザーは満足そうだ。

「しかし…カレーをチョイスするとは意外だったぞ。」

俺の好みが分かったのか?と試すようにシンを見る。

「ああ…。お師さんのお陰でな。」

「?まぁ、いい。

次も期待しているぞ、シン。」

下げていいぞ。

と行ってその場を離れようとする聖帝。

…えっ?次⁇

 

「まて。次ってどういう事だ⁉︎」

「貴様。どうせまだまだ此処に居座るつもりなのだろう?まったく、図々しい。

居候なら居候らしく

料理でくらい楽しませてみろ。わかったな。」

「…。」

それか早く帰れ!と

言わぬうちにサウザーは部屋から消えた。

「…聖帝様はシン殿の料理が気に入られたようです。」

良かったですね!と焦り気味にシェフがフォローを入れる。

…喜んでいいの、か?これは。

 

「シン殿、此処に居られるようにこれから頑張りましょう‼︎ね!」

次期料理長候補が見つかり、浮かれるシェフ(早く引退したい)。

 

これからシンの料理修行の道が始まろうとしていた…。